温浴ビジネスマネジメント&プランニング
小林経営企画事務所

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《KKK通信》 温浴事業のなんでも情報発信〜



温浴コラム:『湯湯談語』


 第2話 「温泉」とビジネス



第一部:温泉競争戦略


温泉競争戦略の始まり
ほんの数十年前までは、一般市民にとって「温泉」(ここで言う温泉とは地下から湧出する天然温泉を言います)とは、別府、草津、道後、有馬、鬼怒川などの温泉地に行って得られるものであり、それは非日常の極みでした。
このように、「温泉」とは一般市民にとっては簡単に手に入れ難いものであり、ある種の憧れであったのです。
従って、高度成長期を経て「身体を洗うため」の「銭湯」から「遊ぶ」「楽しむ」ことを目的とした「健康ランド」の登場により、レジャー施設としての業態と変化した温浴施設が、競争戦略として「温泉開発」を進めていくことになったのは必然なことでした。
このように、健康ランドを中心としたレジャー型の温浴施設が温泉開発を進めていったことで、都市部に「温泉」が登場します。
健康ランドが全盛期であった1980年代から1990年代前半頃は、まだまだ温泉開発技術は未熟であり湧出可能性について不確実性が強く、また掘削コストも高額であったため、温泉開発を進める施設もそれほど多くはなく、温泉自体の希少価値は依然として高いものでした。
そのため、「温泉」を身近に利用できることは、都市生活者にとって衝撃的でかつ魅力的なことであり、「温泉」は絶大な集客力を発揮しました。

温泉競争戦略の拡大
ところが、スーパー銭湯の出現により、「温泉」は大きく変容していきます。
1990年代、スーパー銭湯の創成期には競合環境は弱く、また温泉開発費用についてもまだまだ高額であったことから、温泉開発を進めるスーパー銭湯はほとんどなかったのですが、2000年代に入り、競合環境が厳しくなっていくとともに、温泉開発技術の向上と温泉掘削コストの低減が進み、新設店の多くが温泉開発を進めるようになります。
2000年代半ばになると、出店するスーパー銭湯のほとんどが温泉開発を行い、スーパー銭湯=日帰り温泉施設となり、温泉施設であるために「和風」施設となっていきます。
このように、スーパー銭湯の乱立化が「非日常的な温泉」を日常生活へ持ち込むことになったのです。

温泉競争戦略の終焉
スーパー銭湯が「非日常」である「温泉」を日常生活へ持ち込んだことから、「温泉」自体が大きく変わっていきます。
温泉自体が「非日常的なもの」から「日常的なもの」となってしまったのです。
温泉競争戦略は「温泉」自体が「珍しいもの」「価値のあるもの」「魅力的なもの」であることにより成り立つものです。
市場全体が温泉化してしまうことによって、温泉自体に競争能力が無くなり、反対に「温泉が無ければスーパー銭湯の価値がない」というように、「温泉」がスーパー銭湯事業の必要条件となってしまったのです。

これからの温泉競争戦略の方向性
以上のように、温浴事業にとって「温泉」とは競争戦略ツールではなくなりつつあります。
利用者は「サウナ」「露天風呂」などと同じように「温泉」は温浴施設のアイテムの一つと考え、それらが来店を決めるための絶対的なものではなくなってしまったのです。
また、温泉の乱発化と景品表示法の改正により、利用者の温泉に関する知識は以前と比べものにならないくらいに広がっており、その温泉の使用方法や成分などが「温泉」の評価になっています。
例えば「加水」し、「加温」し、「塩素消毒」し、「濾過循環」している「単純泉」の「温泉」であれば、その施設は利用者にとってはマイナス評価となってしまうのです。
この弊害は古くから営んでいる温泉地にも大きな影響を及ぼしています。
これまで、何の疑問もなく「温泉」であることに満足していた利用者が、有名温泉地であったとしても、その温泉の本質を知ることによって、これまで得ていた満足度が得られなくなってしまうのです。
私個人的には、「知らぬが仏」という言葉がありますが、温泉地などはまさしく「知らぬが仏」であった方が、温泉経営者にとっても利用者にとっても良かったのではないかと思うことがあります。
ともかく今後は、どのような業態の温浴施設であったとしても、利用者にとって付加価値となる要素を持った「温泉」を開発しなければ、温泉競争戦略を「集客戦略」として考えていくことはできません。
このように、「温泉」は競争戦略として捉えることは難しくなっていますが、しかし温泉の持つ特長を活かし、競争戦略とは異なる事業戦略ツールとして考えていくことができます。
第二部では「温泉」を新たなる事業戦略ツールとして捉えていきます。






KKK通信
COLUMN
温浴コラム『湯湯談語』
【過去の掲載】
第1話
公衆浴場の歴史と変遷
第2話
「温泉」とビジネス
第一部
温泉競争戦略
第二部
事業戦略ツールとしての「温泉」
第3話
温泉施設の投資と施設計画

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